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約束の恋人たち⑭

リョクたちはラルドからの手紙を待って、大急ぎでお婆さんの家へと向かいました。



明け方近い空には、まだ月が残っていました。

月の光を受け、蝶の姿になったルリの案内でお婆さんの家へと辿りついたリョクとパクは頑なに閉ざされてしまったドアを叩きます。

「お婆さん、ここを開けてください」
「渡したいものがあるんだよぉ」
けれどもドアは開きません。

まさか本当に死んでしまったのではないかと思ったとき、リョクたちのすぐそばで男の人の声が聞こえました。

とても優しい声でした。

「ローズリップ、僕だよ。ここを開けておくれ」
だけれど周りを見回してみても誰もいません。

「ずいぶん遅くなってしまったね。すまなかった…迎えにきたよ」
すると、家のドアがゆっくりと開き、悲しい目をしたお婆さんが姿を見せました。

「お前さんたち…」
お婆さんは、リョクとパクと青い小さな蝶を見て不思議そうに首を傾げます。

「今、ここに…、いや、そんな訳は無いね。…何か用かい?」

「渡したいものがあるんです」
リョクは紙切れをお婆さんに渡しました。

「これは…」



『ローズリップ。
きっと今頃心配しているだろうね。それとも怒っているだろうか。

君を迎えに行く途中で、僕は谷に落ちて出られなくなってしまった。

あれからどのくらい経ってしまったんだろう
でも必ずここを出て、君を迎えに行くから待っていておくれ。

愛している、ローズリップ。
必ず必ず行くから…』



手紙の最後の方は文字が掠れて見えなくなっていました。
きっとラルドが最期の力で書き残したものだったのでしょう。

「ラルド…」
つぶやいたお婆さんの目から一粒の涙がこぼれました。

「迎えに来たよ、ローズリップ」
声に呼ばれ顔を上げると、お婆さんは若い娘の姿に変わっていました。

差し出された手は、ラルドの姿を現しました。

「さあ、行こう」
手を取りあったローズリップとラルドは、リョクたちに深く頭を下げました。
すると二人の姿はゆっくりと霧が霞んで消える様に薄れていきました。

白み始めた空に月がその影を隠すと、ルリの姿が少女に変わります。
差し込んだ朝日は家の中を照らしました。

「お婆さん…」
家の中でお婆さんが倒れているのが見えました。

急いで駆け寄りましたが、その体はすでに冷たくなっていました。

「きっとあのローズリップは、お婆さんの魂だったんだね」
お婆さんの亡骸を見つめてリョクは言いました。

「悲しいまま逝かせずにすんだわよね」
ルリがポツリとつぶやきました。

お婆さんの亡骸は、やがて光りの中で一輪の薔薇の蕾となり、粉々になって消えていきました。


リョクたちはお婆さんの家を離れ旅を続けることにしました。



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