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蝶の里①

「置いて行くわよ」
アゲハはリョクの頭の上を回ってから、野原をヒラヒラと飛んで行ってしまったので、リョクはパクを抱え慌てて追い掛けました。



アゲハに導かれて、リョクとパクは、美しい谷へと辿り着きました。
そこは色とりどりの花たちが咲き乱れ、まるで楽園のようです。

「ようこそ、私たちの谷へ。ここが蝶の郷よ」
アゲハは嬉しそうにヒラヒラと舞いました。

「お帰りなさい、アゲハ」
「アゲハ、お帰り」
「久しぶりだね、アゲハ」
たくさんの声が聞こえます。

あっと言う間に、リョクたちの周りは、数えきれないほどの蝶が集まってきました。

「ただいま」
アゲハも答えます。
「長い間、留守をしていてごめんね。みんな元気そうで良かったわ」
アゲハは長く旅をしていたようです。

「お客さんを連れてきたわ。リョクとパクよ」
「こんにちは」「こんにちは」
リョクとパクは珍しいそうに見つめる蝶たちに挨拶しました。

「人間だわ」「人間ね」「人間か」
蝶の間から、幾つもの声が聞こえてきました。

「私たちに聞きたいことがあるそうなのよ」
アゲハがそう言って、促したので、リョクは蝶たちに尋ねます。

「どなたか月の城のことを知りませんか?どうか教えてください。お願いします」
すると蝶たちは一斉に答えました。

「知っているわ」「ああ、知っているよ」「あたしも知ってる」

驚くことにみんなが知っているようなのです。
これにはアゲハもびっくりしました。

「この谷の蝶は、月の城のことを皆知っているよ」
「どういうことなの?」
縞模様の翅の蝶が言った言葉に驚いて、アゲハは尋ねます。

「ルリが帰ってきたんだよ」
斑模様の翅が美しい蝶が答えます。

「ルリが?」
「アゲハ、ルリって誰?」
パクが聞いてみました。

「ルリはルリシジミという小さな蝶よ。私が旅に出る少し前に、ルリも谷から出たのだけれど、それきり行方が分からなくなっていたのよ」
アゲハはパクにルリのことを教えてくれました。


「それで、ルリは今何処にいるの?」
「カエラズの池にいるわ」
目玉模様の翅の蝶が答えます。


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