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花園①

リョクとパクは、お礼を言いながら振り向きましたが、そこにはもうチャイはいませんでした。





リョクとパクは道を歩きだしました。
道はやがて、キレイな花園へと辿りつきました。

「うわぁお花がいっぱい、みんなキレイだね」
お花の大好きなパクは大喜びで騒ぎます。

「みんなキレイですって?冗談言わないでよ!」
すぐ側で怒鳴られ跳びあがったパクは、泣きべそをかきながらリョクの影に隠れ込みます。

「あたしが一番キレイに決まっているわ」
そう言って花びらを揺らしたのは、茶色の斑点が美しいオレンジ色のタイガーリリーでした。

「ふざけないで、私こそ一番にふさわしいわ!」
タイガーリリーを押し退けて、華やかな赤い薔薇がしゃしゃり出ます。

「あたしなんか、あの太陽にも負けないほど美しいのだわよ」
リョクの頭より高いところからも声が聞こえます。

見上げると一際大きい向日葵の花がムッスリとむくれていました。

「あんたなんかお呼びじゃないわ!引っ込んでなさいよ」
可憐なピンクのチューリップがプリプリと怒り出したかと思うと、ニョキニョキと向日葵ほどに大きくなっていきます。

リョクとパクがびっくりしている間に、花園は次々と大きくなった花たちでいっぱいになっていました。
花たちはあっちでわたしが、こっちで私がと大騒ぎのです。

「みんな落ち着いてください」
リョクは喚きたてる花たちをなだめます。

「あなたは、どう思うの?もちろん私が一番キレイよね」
一抱えもある大きさの黄色いスイートピーが、リョクに聞きました。

「僕はみんな同じようにキレイだと思います」
リョクは自分が思ったとおり答えました。

「同じですって?!この私が、こいつらと同じ程度だと言うの!」スイートピーはもうカンカンです。

「そっちのおチビさんは、どの花が一番キレイだと思う?」
「ぼく、わからないよぉ」
大皿の様な桃色のコスモスに迫られて、パクはますます脅えます。



確かに好きな花はと聞かれれば、リョクは霞草と答えるでしょう。
包むような優しい雰囲気の花だからです。

パクならばシロツメ草です。
食べるとほんのり甘くで美味しいからです。

もちろん霞草もシロツメ草もこんなに大きくなければですけれど
でもどの花が一番キレイかなんて、とうてい言い切れません。

どの花もそれぞれに美しいのですから。



「それにしてもあなたたち不格好だこと。いったい何という花なの?」
「きっと名もない雑草ね。雑草の分際で、私たちの花園に紛れ込むなんて良い度胸だわ」
巨大なカトレアとポピーが、リョクとパクを指差して笑いました。

「僕たちは雑草じゃないし、花でもありません!」
「ひ~ん、ヒドイよ」
とうとうリョクも怒りだしパクは泣きだしてしまいます。

花園は今や大混乱でした。
誰もがお互いの悪口を言いあい、誰もが自分だけを誉めちぎります。

「こっちよ、着いてきて。こんなところいつまでも居ちゃ駄目よ」
突然リョクの耳元で声がしました。

「え?誰の声?」
「いいから、早く」
今度はリョクの耳を引っ張ります。

でも、いくら目をこらしてもリョクには誰の姿も見えません。

「どこにいるんですか?」
「声のする方に着いてきて」
リョクは花たちに埋もれたパクを、手探りで捕まえると胸に抱き抱えました。

「ここから逃げよう、パク」
「ひーん。ぼく、花なんて大嫌いっ」
パクはリョクの腕の中にいても、まるで気が付かずに、まだ泣いています。

「こっちよ、分かるわね」
「はい」

導いてくれる声は、リョクの斜め上からユラユラと揺れるように聞こえ、遠くなったり近くなったりします。


リョクは喚きあう花たち掻き分けながら、決して声を聞き逃すまいと必死で着いていきました。



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