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約束の恋人たち①

それは、リョクがコウを探す旅に出てから、初めて流した暖かい涙でした




「じゃあな、俺はここでお別れだ」
翌朝、宿を出て街の外れまで来ると、カラスのクーロが言いました。

「行っちゃうの?」
「大事な用があるんだ」
寂しそうにつぶやくパクの頭を、クーロはその黒い翼で優しく撫でます。

「そんな顔するな。また会えるさ。パクが俺のこと忘れないでいてくれれば、きっとな」
「本当?」
「ああ、この街の言い伝えなんだぜ。信じろ」
「うん」

「クーロ、いろいろありがとう」
リョクは心からのお礼の言葉を言いました。
クーロのお陰で、自分の過ちを、友だちに告白する勇気を持てたのですから。

「リョクも、コウのことを忘れない限り、きっと会えるぜ。元気でな」
クーロはフワリと舞い上がると、カァと一声鳴いて街の方に飛んでいきました。

リョク達はクーロの姿が見えなくなるまで見送ってから、街とは反対の方向へと歩き始めました。





「ゴホンゴホン」
道はやがて小さな森の中へと、リョク達を導きました。
木々の陰から、しおがれた咳が聞こえてきます。

「ゴホンゴホン」
「誰かいるの?」
ルリが木の陰に向かい声をかけると、小さな人影がゆっくり姿を見せました。

それはとても長い杖をついた小さなお婆さんでした。
ルリの胸の高さほどの背丈しかありません。

「大丈夫ですか?」
ルリは心配そうに言いました。

「おぉ、ありがとう。優しい娘だね。
急に胸が痛くなって、動けなくなってしまったんだよ」
お婆さんは、腰を屈め苦しそうに胸を押さえます。

「家は遠いのですか?」
「いいや、そこの坂を降りたところなんだよ」
お婆さんは、森の道から伸びる坂の横道を指差しました。

坂道は暗く深く森の奥へと降っています。

「送ってあげましょう。ね、リョク」
「そうだね」
ルリとリョクはお婆さんの手を取り、パクはお婆さんの荷物を抱え、ゆっくりと坂を降り始めました。




しばらく降りていくと、坂の終わりに着きました。
小さな家が一軒ポツンと建っています。

「ああ、あれがわたしの家だよ。お前たちありがとう。お礼にお茶をご馳走するよ」
お婆さんはルリの手を離さずに家へと引き寄せます。

「ごめんなさい、お婆さん。僕達急いでいるのでもう行きます。ルリ、行こう」
リョクはお婆さんの誘いを断りルリを呼びました。

「そう言わずに、ちょっとくらい良いだろう」
お婆さんはなおも誘います。

「お願いだよ。ここには滅多に誰も来やしない。話し相手になっておくれ。そうだ、お嬢ちゃん占いは好きかい?」
「占いって何?」
初めて聞いた言葉にルリは惹かれてたずねます。

「おや、占いを知らないのかい?未来や過去を見ることが出来る不思議な術だよ」
「お婆さん、未来が分かるの?」
「ああ、とても良く当たるんだ。特別にお嬢ちゃんの未来を占ってやろう」
ルリはお婆さんに導かれるままに家の中へと入ってしまいました。

仕方なくリョクとパクも家の中へ入っていきました。

小さな家の中は、色々なものが詰め込まれ雑然としています。
お婆さんはリョクとパクにお茶を出してくれました。

「お嬢ちゃん、占いはあちらの部屋でやるんだよ」
そしてルリを小さなドアの向こうに連れて行ってしまいました。
お茶はあまり美味しくありませんでしたなんだか少しカビ臭い感じがするのです。


「ルリ、大丈夫かな…」
リョクとパクは心配そうにじっとドアを見つめました。


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